平成29年 不動産鑑定士試験 短答式 鑑定理論 問19
総論第7章A 最重要
収益還元法の適用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) DCF法による試算価格は、将来発生する純収益及び復帰価格の現在価値の総和であるが、直接還元法による試算価格は一期間の純収益を還元したものなので、現在価値の総和ではない。
(2) 対象不動産は、郊外路線商業地域に立地する賃貸店舗であり、典型的な投資家が一般的に想定する保有期間は概ね5年である。ただし、対象不動産は事業用定期借地権(残存期間4年)を敷地権原とする借地権付建物であり、契約期間内に建物を取り壊して更地として借地権設定者に返還する契約になっている。この場合、DCF法の適用において、残存借地期間を超える保有期間(分析期間)を設定することはできない。
(3) DCF法の適用においては将来の純収益の変動予測を行うが、直接還元法においては将来の純収益の変動予測は必要ではない。このため、証券化対象不動産に係る鑑定評価において直接還元法は、予測の限界から不確実になりがちなDCF法に対する有力な検証手段として位置付けられている。
(4) 更地の収益価格を求める場合、一般的に事業用不動産は個別性が高く賃貸市場が成熟していないため、当該土地上に事業用不動産の建築を想定してはならない。
(5) 還元利回りを求める方法のうち割引率との関係から求める方法は、純収益が償却後の場合で、かつ、純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に有効である。
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正解:(2)
解説
【正解 (2)】正しいのは(2)です。
(2) ○:保有期間(分析期間)は、毎期の純収益及び復帰価格について精度の高い予測が可能な期間として決定し、典型的な投資家が保有する期間を標準とします。本肢では事業用定期借地権の残存期間が4年で、契約上その期間内に建物を取り壊して更地返還することになっています。典型的な保有期間が5年であっても、権利が消滅する時点を超える保有期間を設定することはできません。
(1) ×:直接還元法も、一期間の純収益を還元利回りで還元することにより将来の収益の現在価値の総和を把握する手法です。考え方の基礎は同じであり、「現在価値の総和ではない」とはいえません。
(3) ×:位置づけが逆です。証券化対象不動産の鑑定評価では、DCF法を適用し、直接還元法はその検証手段として用います(各論第3章)。また直接還元法でも将来の動向は還元利回りや標準化された純収益に反映されるため、変動予測が不要というのも誤りです。
(4) ×:更地の収益価格は、当該土地に最有効使用の建物の建築を想定して土地残余法等により求めます。事業用不動産の建築を想定してはならないという定めはありません。
(5) ×:割引率との関係から還元利回りを求める方法は、純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に、割引率から純収益の変動率を控除して求めるものです。「償却後の場合で、かつ」という限定はありません。
📖 関連するテキスト:21-1 直接還元法(鑑トレの会員ページ)